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「肺炎について詳しく知る:
原因から予防まで」
肺炎とは何か?
肺炎の定義と種類
肺炎とは肺という酸素を体に取り入れている臓器に急に起こる(急性)、感染性の炎症のことです。簡単に言うと肺炎は肺に細菌が入って住み着いてしまった状態です。肺炎は普通に暮らしている健常な方がかかる市中肺炎、入院中の身体が弱っている方がかかる院内肺炎、介護施設などに入所中の方がかかる医療・介護関連肺炎などがあります。肺炎を上記のように分けるのは、主には患者さんの背景や原因菌が違うためですが、当院ではほとんどが市中肺炎のため、主に市中肺炎に関して記載したいと思います。
肺炎の主な原因
成人の市中肺炎における原因微生物は他者から感染するものが多いですが、環境中のものを吸い込むことで発症するものもあります。 「肺炎診療ガイドライン2024」では原因微生物として
- 肺炎球菌
- インフルエンザ菌(インフルエンザウイルスではありません)
- マイコプラズマ・ニューモニエ(マイコプラズマ肺炎)
- クラミジア・ニューモニエ
- モラクセラ・カタラーリス
- 黄色ブドウ球菌(インフルエンザウイルス感染後の二次感染に多いです)
- クレブシエラ・ニューモニエ(肺炎桿菌)
- 緑膿菌
- インフルエンザウイルス
- レジオネラ属
肺炎の症状と身体所見
肺炎の主な症状とは?
肺炎の主な症状は、感染による体の反応と、酸素の取り込みが悪くなるものに起因します。具体的には、発熱、息切れ、痰、咳が一般的ですが、重症化すると意識障害、肝不全、腎不全、循環不全をきたし命にかかわります。
医師が確認する身体所見とは?
主には聴診で肺の呼吸音に問題がないか確認します。それと同時に患者さんの元気さを評価します。たとえばA-DROPスコアという重症度の基準があり、年齢、脱水の有無、酸素濃度、意識レベル、血圧などの項目を評価します。
肺炎の診断と検査方法
胸部X線検査
問診や診察の結果、肺炎を疑った場合、胸部X線検査やCT検査を行います。特徴的な陰影が認められれば肺炎と診断します。陰影のパターンで肺胞性肺炎(肺炎球菌性肺炎、レジオネラ肺炎、クレブシエラ肺炎など)と気管支肺炎(ほとんどの細菌性肺炎)、ウイルス性肺炎の推定ができる場合もあります。
血液検査
肺炎の活動性(どのくらい強い炎症なのか)を調べたり、肝臓や腎臓などの臓器に影響が及んでいないかを調べることができます。抗体を調べることで原因菌の同定につながる場合もあります。
喀痰検査(グラム染色、培養)
原因菌の同定を行う重要な検査です。培養で原因菌が同定できた場合はその菌にどの抗菌薬が効くかまでわかります。しかし患者さんの痰が採れない場合はできませんし、ウイルスは培養できません。また痰が採れて、顕微鏡でみたり培養しても原因菌が検出されないこともあります。
抗原検査
原因同定のための検査です。インフルエンザウイルスや新型コロナウイルス、マイコプラズマなどの同定ができます。症状がでてしばらくしてから(体内で病原体が増えてから)でないと検出されないことが多いのが欠点ですが、15分程度で結果がでて簡便に行えるのがメリットです。
核酸検査(PCR検査など)
微量の検体でも病原体を検出できる検査です。できる施設が限られていることと、抗原検査よりも費用がかかるのが欠点です。
肺炎の治療法
抗菌薬治療
肺炎の治療は抗菌薬による治療になります。前述の原因菌を調べる検査で原因菌がわかっている場合は、その菌に効くような抗菌薬を選択します。そうでない場合は、医師が患者さんの年齢や基礎疾患、検査結果、地域の流行状況をもとに、ターゲットとする菌群を推測して治療を行います。薬が効いているかどうかは、解熱しているか、咳、痰、息切れなどの症状が改善傾向になっているかどうかを3日程度を目安に判断することが多いです。
入院治療と自宅療養の違い
肺炎は軽症であれば抗菌薬を内服してもらいながら自宅療養することが可能です。しかし肺炎の程度がひどく、酸素投与が必要な場合や、前述するA-DROPスコアなどで肺炎が中等症以上と判断した場合は、総合病院の外来の先生にご紹介させていただきます。そちらで必要と判断されれば入院治療になります。
肺炎の予防方法
ワクチン接種の重要性
肺炎は感染症ですので、ワクチン接種でかかるリスクを減らすことが可能です。発熱などの副反応がある場合もありますが、肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチン、新型コロナウイルスワクチン、RSウイルスワクチンなどがあります。ワクチンをすればまったく感染しなくなるわけではないですが、感染リスクや重症化リスクが下がることが科学的に証明されています。
生活習慣の改善でリスクを軽減
肺炎は予防の意味でも治療の意味でも免疫機能(自分の身体が病原体と戦う力)が重要です。規則正しい日々の生活習慣で免疫機能を高めましょう。具体的には
- バランスのよい食事をとる
- 十分な睡眠をとる
- 適度な運動をする
- ストレスをためない
- 禁煙と適度な飲酒
- 適切な体重を保つ
- 体が冷えないようにする
- 手洗いやうがいをする
肺炎の治療中と回復後の生活
治療中
肺炎は自分自身の免疫機能と抗菌薬、抗ウイルス薬で改善します。まずは適切な水分、栄養をとりゆっくり休みましょう。病原体や患者さんの腎臓の機能によって抗菌薬は1日の投与回数や投与期間が異なります。不適切な内服で耐性菌化して治療に難渋することもあります。必ず投与回数と投与日数を守りましょう。抗菌薬の副作用が出た場合は医師か薬剤師に相談してください。
回復後
治療が終了し元気になったとしても、体の筋力量が落ちたり、本調子にはすぐには戻らないことも多いです。しばらくは夜更かししたり、過度な飲酒などを避け、規則正しい生活を送りましょう。肺炎治療後に咳が残存する場合がありますが、多くは3週間以内に緩徐に軽快します。途中で増悪する場合は、再び肺炎になっている可能性や、肺炎を契機に喘息や心不全症状が出ている可能性もあります。早めに受診して医師に相談しましょう。