佐久市岩村田の内科、小児科、呼吸器内科、糖尿病内科、アレルギー科なら角田医院分院

TEL.0267-68-0550

〒385-0022
長野県佐久市岩村田天神堂3162-36

MENU
  • HOME
  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療について

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療について

COPDの治療目標はガイドラインでは

  • 現状の改善
  • ① 症状、生活の質の改善

    ② 身体活動性の向上(より強い運動ができるようにする)

  • 将来のリスクの低減
  • ③ 増悪の予防

    ④ 合併症の予防

とされています。そのためには「禁煙」、「薬物療法」、「運動習慣」、「ワクチン接種」が重要です。

禁煙

禁煙は治療というよりは予防の意味合いのほうが強いかもしれません。ですが喫煙しなければCOPDになることは稀ですし、COPD患者さんも禁煙すると肺機能の低下を緩和し、急性増悪の頻度や死亡率を低下させることがわかっています。そのためすべてのCOPD患者さんにとって禁煙はとても大事です。受動喫煙(近くにいる人のタバコの煙を吸うこと)を避けることも大事です。当院の外来でも受診のたびに禁煙の確認をしていますが、禁煙はむずかしい方もいらっしゃいます。その要因はニコチン依存があるためです。依存には身体的依存と精神的依存があります。禁煙によりイライラするなどの苦痛となるような症状が出現することが身体的依存です。身体的依存は血中のニコチンの枯渇により起こりますが、完全に禁煙することにより数日で急速になくなります。また喫煙は一般的にストレス発散になると誤認されやすく、そのため精神的依存になりやすいです。精神的依存は非常に長く続くこともあります。喫煙はニコチンによりドパミンという物質が放出されるため、ストレス発散したような気になるだけで、あくまで誤った思い込みなのですが、それを解くのはむずかしく、繰り返し説明するほかありません。
そのほか非燃焼・加熱式タバコなどの新型タバコなどが近年増えてきていますが、日本呼吸器学会は、その使用を推奨していません。有害物質の総量としては従来のタバコよりも少ないかもしれませんが、ニコチン、タールは含まれておりますし、その他従来のタバコにはない成分が含まれています。新型タバコ喫煙者のデータも乏しいことから今後様々な呼吸器疾患のリスクになることも考えられます。煙は出なくても、喫煙者の吐く息には有害物質が含まれており受動喫煙もあります。健康のためには、やはり新型タバコに変更するのではなく完全な禁煙が望ましいです。

薬物療法

  • 吸入薬

COPDの薬物治療で大事なのは吸入薬です。中でも治療の主役は長時間作用性抗コリン薬(LAMA)と長時間作用性β2刺激薬(LABA)で、必要な症例には吸入ステロイド(ICS)が使用されます。たくさんの吸入薬を吸うのは大変なので、治療には複数の薬剤が入ったデバイス(吸入薬を吸うための容器)を使用します。主な組み合わせはLABA/LAMA、ICS/LABA/LAMAであることがほとんどです。
LAMAとLABAは気管支拡張剤といって、気管支を拡げる薬です。COPDは気管支がつぶれやすく、虚脱してしまう病気ですので、気管支を拡げることで息切れなどの症状を緩和することができます。またLAMAは気道の粘膜の腺組織からの分泌物を抑え「痰」を少なくし、LABAは気道の上皮の線毛の動きを強くすることで「痰」を外に出しやすくする作用があります。さらに LAMA/LABAを併用することでお互いの作用に好影響を与えることが知られており、上記の気管支拡張作用、「痰」を改善させる作用が増強されることがわかっています。 当院でも一定の症状があるような患者さんはLAMA/LABAで治療を開始しています。
吸入ステロイド(ICS)は気道の炎症を抑える吸入薬です。特に気管支喘息では重要な薬剤ですが、COPDはあくまで補助的に使用します。重症のCOPDではICSが肺炎のリスクになる可能性があるからです。ICSがCOPDで必要なのは気管支喘息の合併が考えられるときです。またCOPD急性増悪のように発作的な呼吸状態の悪化があった方も使用されます。COPDの方へのICSの使用は注意が必要ですが、気管支喘息の合併が疑われるときはむしろ使わなければなりません。気管支喘息の治療の項でも記載したのですが、気管支喘息にICSを使用しないでLABAを使用すると、LABAだけでなく気管支喘息発作の時に使用する短時間作用性β2刺激薬(SABA)も効きづらくなってしまい、気管支喘息発作の際に命にかかわることがあるためです。

  • 内服薬

内服薬はCOPDの治療においては吸入薬の補助的な役割で使われることがほとんどです。喀痰調整薬とマクロライド系の抗菌薬が使用されます。
喀痰調整薬はCOPDの方の痰の量を抑え、痰を出やすくします。またCOPD急性増悪の既往がある方の増悪を抑制し、生活の質を良くする作用があることも知られています。
マクロライド系の抗菌薬(クラリスロマイシン、エリスロマイシン、アジスロマイシン)は気管支に悪さをする細菌を殺菌する作用もあるのですが、それに加えて気道炎症を抑える作用、痰の量を減らす作用、痰を排出しやすくする作用(自浄能力改善作用)があることが知られています。特に頻繁に肺炎などの気道感染症を繰り返す症例に有効です。使用前には必ず痰の検査を行い、非結核性抗酸菌などの慢性気道感染を起こす菌がいないことを確認します。

運動習慣

COPD患者さんは病気が進行すると労作時の息切れのために、運動するのがつらく、出歩くのが億劫になってしまいます。運動しなくなったり、出歩かなくなったりすると、四肢の筋力が低下し、少しの運動にも多くの酸素を必要とするようになります。しかし、COPD患者さんの肺にはその酸素を供給するのに十分な余力がないため、より強い息切れを感じるようになります。するとさらに運動などの身体活動を避けるようになり悪循環になってしまいます。この悪循環を断ち切るためには、無理のない範囲ではありますが、運動をするほかありません。目標として週に3回30分ずつご自分のペースで散歩など、主に下肢を使った運動をするのがよいです。ご自身で動けない場合などは呼吸リハビリテーションをおねがいすることもあります。

ワクチン接種

インフルエンザワクチンはCOPDの増悪頻度と死亡率を減少することがわかっています。具体的にはインフルエンザワクチンによって、インフルエンザやその関連肺炎による入院を30%減少させ、死亡率も50%減少させるというデータがあります。
また肺炎球菌ワクチンは23価莢膜多糖体型肺炎球菌ワクチン(PPSV23)と13価蛋白結合型肺炎球菌ワクチン(PCV13)の2種類があります。PPSV23は大規模な研究でCOPD患者さんの肺炎やCOPD増悪が抑えられることがわかっており、PCV13も65歳以上の肺炎球菌性肺炎を抑制することがわかっています。PPSV23は国の定めた定期接種に入っており、65歳以降の5年ごとに初回のみ定期接種のお知らせが来ていると思います。PPSV23は5年ごとに接種することが推奨されています。PCV13は任意接種になっていますが、PCV13とPPSV23の併用によってより強力に肺炎球菌を予防することができます。COPDの方はリスクが特に高いので、まずはPPSV23による定期接種をベースとして、PCV13も時期をみて接種するのが良いと考えられます。佐久市では66歳以上で定期接種の対象外の方の肺炎球菌ワクチンの助成がありますのでご活用ください。助成を希望される場合は先に申請を行ってから予約を行い接種するようにご注意ください。以下のリンクから佐久市の申請ページにジャンプできます。

その他の治療

  • 栄養療法

COPDの方は食思不振、呼吸エネルギーの増大などで体重減少が起こります。必要に応じて栄養補助食品や栄養相談が必要となります。

  • 酸素療法

血中の酸素濃度が低下した時に行います。移動する時のみ使用することもあります。

  • 補助換気療法

血中の二酸化炭素が上昇しているときに行います。主に夜間に使用します。また呼吸に使う筋肉が疲弊しているときにも行います。