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慢性咳嗽(8 週間以上続く咳)について

2020年4月21日

  • 慢性咳嗽(8 週間以上続く咳)について

  • 1. 2 ヶ月以上続く咳は、専門的なアプローチが必要です

    咳が 8 週間(2 ヶ月)以上続いている状態を「慢性咳嗽」と呼びます。 ここまで⻑引く咳 の原因は、単なる感染症(風邪)であることは稀です。複数の原因が重なっていたり、肺以 外の病気が隠れていたり、あるいは「神経の過敏状態」が起きていることもあります。 当院では、呼吸器内科専門医・アレルギー専門医として、⻑引く咳の正体を突き止め、根本的な治療を目指します。

    2. 慢性咳嗽の代表的な原因

    原因の診断には胸部レントゲンは必ず行い、重大な疾患を除外する必要があります。胸部レントゲンに異常がない場合、下記のような原因が考えられます。慢性咳嗽の原因は多岐にわ たりますが、当院では以下の可能性を患者様のお話を聞いて、可能性が高い順に一つひとつ丁寧に検証します
    咳喘息(せきぜんそく): 慢性咳嗽の最も多い原因です。放置すると本格的な喘息に移行するリスクがあります。
    アトピー咳嗽: アレルギーが原因で、喉のイガイガ感や痒みを伴う咳です。
    副鼻腔気管支症候群: 慢性的な副鼻腔炎(蓄膿症)と下気道の炎症が合併した状態で、⻩色い痰を伴うことが多いのが特徴です。
    胃食道逆流症(GERD):胃酸が逆流し、下部食道や喉を刺激することで咳が出ます。
    慢性誤嚥:唾液をうまく呑み込めず、気管に入ってしまい咳がでます。ご高齢の方や脳卒中後の方に多いです。食事中にむせるエピソードがあります。
    咳過敏症(上気道咳嗽症候群:UACS を含む): 以前は「後鼻漏(こうびろう)」と 呼ばれていた状態も含まれます。鼻や喉の神経が過敏になり、わずかな刺激でも激しい咳が出てしまう状態です。
    心因性咳嗽: 検査で異常がなく、ストレスや緊張が引き金となって出る咳です。寝ている間には出ないことが多いのが特徴です。
    お薬の副作用: お薬が原因で咳が出ることがあります。
    【例】血圧の薬(ACE 阻害薬など)
    重大な疾患の除外: 肺がん、肺結核、間質性肺炎、肺非結核性抗酸菌症、COPD、心不全など。

    3. 精密な検査による「原因の見える化」

    原因を特定するために、当院では以下の検査を必要に応じて組み合わせて行います。
    血液検査: アレルギー体質の有無(IgE 抗体)、百日咳などの感染既往、炎症反応を確認します。
    呼気 NO(一酸化窒素)検査: 気道のアレルギー炎症を数値化し、咳喘息の診断の助けになります。
    呼吸機能検査: 肺の膨らみやすさや空気の通り道の状態を詳しく調べます。
    画像診断(レントゲン・CT): 院内でレントゲン撮影を行い、詳細な評価が必要な場合は、近隣の提携病院にて CT 検査を迅速に手配いたします。

    4. 慢性咳嗽の治療

    原因疾患に合わせた「ターゲットを絞った治療」を行います。
    咳喘息:吸入ステロイド薬を中心に、気道の炎症を抑えます。
    アトピー咳嗽:抗アレルギー薬などを用いてコントロールします。
    副鼻腔気管支症候群: 少量マクロライド療法(抗菌薬を少量で⻑期服用する治療)や去痰薬を組み合わせ、副鼻腔から気管支全体の浄化を行います。
    胃食道逆流症: 胃酸を抑えるお薬の処方とともに、生活習慣のアドバイスを行います。
    慢性誤嚥:嚥下能力の改善が期待できる薬剤を投与します。
    咳過敏症:必要に応じて気道の過敏性を鎮めるお薬や咳止めを検討します。
    漢方治療: 喉の違和感や、心因性の要素が疑われる場合、体質に合わせた漢方薬が非常に高い効果を発揮することがあります。

    5. ご自宅での過ごし方と「咳日記」

    「咳の記録」で原因を特定する(最重要)
    咳が⻑引く場合、「いつ、どこで、何をしている時に」咳が出るかが診断の最大のヒントに なります。以下の項目をメモしていただけると診断の助けになります。
    タイミング: 朝方、夜寝る前、食後、会話中など
    環境の変化: 暖かい部屋から寒い外に出た時、掃除中、職場に着いた時など
    その他の刺激: 香水や洗剤の匂い、冷たい飲み物、特定の食べ物など

    空気の質と「温度差」の管理(佐久地域の寒暖差対策)
    気道が過敏になっているため、わずかな刺激が咳を誘発します。
    湿度の維持: 加湿器を使用し、湿度 50〜60%をキープしてください。特に冬場の佐久地域は乾燥が激しいため、喉の粘膜を保護することが不可欠です。
    温度差を減らす: 急激な寒暖差は咳の発作を引き起こします。冬場に外へ出る際は、マスクを着用して吸い込む空気をあらかじめ温める工夫が有効です。
    空気の浄化: ハウスダストやペットの毛が刺激になることもあるため、こまめな掃除と換気を心がけましょう。

    食生活と「胃」への配慮
    「胃食道逆流症(GERD)」が咳の原因、あるいは悪化要因になっているケースもあります。
    寝る前の食事を控える: 就寝の 2〜3 時間前までには夕食を済ませてください。
    刺激物を避ける: 炭酸飲料、アルコール、カフェイン、辛い食べ物、チョコレートなどは、胃酸の逆流を招きやすいため、咳が落ち着くまでは控えましょう。
    こまめな水分補給: 喉を潤すことで痰を出しやすくします。ただし、一気に飲むのではなく「ちびちび」と回数を分けて飲むのがコツです。

    就寝時の姿勢と鼻のケア
    上半身を少し高くする: 完全に横になると、鼻水が喉に落ちたり(後鼻漏)、胃酸が逆流しやすくなったりします。枕やクッションを使って、上半身を少し高くして寝ると咳が楽になることがあります。
    鼻うがいの検討:「上気道咳嗽症候群」などで鼻水が喉に流れる違和感が強い場合、市販の鼻洗浄キットでの「鼻うがい」も喉への刺激を減らす可能性があります。

    メンタルケアとリラックス
    「また咳が出るかも」という不安(緊張)自体が、咳過敏症や心因性咳嗽を悪化させます。
    腹式呼吸: 咳が出そうになった時、ゆっくりと鼻から吸って口から細く⻑く吐く「腹 式呼吸」を行うと、気道の緊張が和らぐことがあります。
    十分な休養: ⻑引く咳は想像以上にエネルギーを使います。夜間に咳で眠れない場合は、日中も無理をせず、意識的に体を休めてください。

    本人が原因と考えている点や気になっている点
    もしかしたらこれが原因かもしれない、というものがあれば診察時に教えてください。診断の助けになることがあります。